2016.06.02更新

1 海外在住の夫が生活費を入れない

 夫はある商社の海外法人に勤務。好待遇を得ているが,日本の妻に生活費を送金しなくなり困り果てた妻が当事務所を訪れた。

 妻は専業主婦で2人の娘を育てている。早速婚姻費用の請求を行おうとしたが,ひとつ問題が。

2 送達に1年?

 申立をすると裁判所は書類の副本を相手方に送達する。海外にいる夫に送達するには,当然海外宛に送達の手続を取る。こういう場合、2国間で送達に関する条約が結ばれていればその条約に従う。結ばれていなければ多国間で締結される民事訴訟条約または送達条約に相手国が参加しているかが問題になる。参加していればその条約に従って手続を取る。どの条約も結んでいない場合、外交ルートで嘱託することになるのだが,この事案ではその手続に約1年かかることがわかった。生活費を得るために1年待つというのは無理な話なので,何とか早められないか考えた。

 そんなとき,一時的に日本の実家に夫が戻るという情報を得たため,その実家を「居所」として送達場所にするように裁判所に働きかけた結果、認めてもらうことが出来た。こうして,婚姻費用分担請求の審判が開始。

3 審判~結果

 夫は弁護士を伴わず1人現れ,妻には十分な個人資産があることなどを理由に妻の生活費分を支払うことを拒んだ。

 当方は互いの収入に応じて算定するのが原則であって妻の資産を考慮する必要は無いなど縷々反論。最終的には固定額+子ども達の学費・塾代・学用品費用などを実費で支払うという提案を夫がした。算定表通りの金額よりも得になる可能性が高く(とりわけ私学に進学した場合),応諾。その場で付調停とし,解決に至った。

 

 

投稿者: 弁護士石井康晶

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