2016.08.01更新

1 配偶者以外の異性と関係を持った方から聞かれることが多い質問です。有責配偶者とは,簡単に言えば,離婚の原因を作った人ということです。不貞は代表的な離婚 原因ですので,不貞をした側は有責配偶者になることが多いでしょう。

2 ただ,離婚を請求できるか?という問いは若干の誤解を含んでいます。請求するのは自由だからです。離婚することについて当事者で意見が合わないときは,家庭裁判所で調停という手続をすることになりますが,そこでも合意できなければ,離婚を望む側としては訴訟を起こすしかありません。国民には裁判を受ける権利がありますから,裁判上で離婚を請求することは可能です。請求できるか?という問いには誤解がある,といったのはこういう意味です。

3 しかし,有責配偶者からの離婚請求は実際上簡単には認められません。有責の程度・別居期間・婚姻期間・同居期間・未成熟子の存在・配偶者の社会的心理的経済的ダメージなどなど,様々な事情を考慮した総合判断になります。ですから,何年別居したらOK,と簡単に言い切ることは適当ではないでしょう。とはいえ,無責の場合と比べて長期間の別居が必要になることは言えますから,有責で離婚を希望する場合,早期に別居の開始を勧めます。なお,別居後に生活費(婚姻費用)を請求したい場合、認められない可能性があることには注意しましょう。

投稿者: 弁護士石井康晶

2016.06.02更新

離婚の際に養育費の取り決めをしても,きちんと履行されないことは起こりえます。そんなとき,「支払うまでは子どもに会わせない」という対抗手段をとろうとする方がよくいらっしゃいます。離婚する前の別居している時点でも,同じようなことは起こる可能性があります。

しかし,結論から言えばそういうことはできません。

養育費の支払いと,子どもと非監護親の面会(面会交流)は別問題です。お金を払わないなら会わせない,という言い方はできません。逆に,「会わせないなら払わない」とも言えません。不払いがあるときは,取り決めに従って,取り決めがないときは家庭裁判所の調停で改めて取り決めをし,支払を求めましょう。逆の立場、つまり子どもに会わせて貰えない側であれば,面会交流調停をやはり家庭裁判所に申し立てることになります。

とはいえ,養育費を支払わない相手に協力的な態度を取ることは実際難しいでしょう。これは当然の気持ちだと思います。逆に,子どもに会いたいが養育費を払っていない立場の方は,相手の協力を取り付けるためも払うべきものは払った方が良いでしょう。一括して解決できるのが一番ですね。

 

 

 

投稿者: 弁護士石井康晶

2016.05.09更新

有責配偶者からの離婚請求はハードルが高い

 不貞は夫婦の離婚原因となるもので,不貞をした一方配偶者は離婚の原因を作り出した「有責配偶者」となります。有責配偶者からの離婚請求はとてもハードルが高いのが現実です。別居期間の長さ,未成熟子の存在,離婚によって相手配偶者が精神的・経済的・社会的に過酷な状況に陥るかどうか,といった諸事情を考慮して離婚の可否を判断することになりますが,小さなお子さんがいる場合には,相当な別居期間をおく必要があるでしょう。

 

裁判外で合意できれば離婚は可能

 上記は裁判離婚の場合であり,協議離婚・調停離婚であれば合意を形成できる限り離婚はできます。早期の離婚を希望する場合は,これらの方法で離婚に向けた話し合いを行うことになるでしょう。但し,金銭面では譲歩が必要になるかもしれませんね。 速やかに離婚できない場合には別居するしかありません。どれくらい別居すればいいのかというのも難問ですが,これも夫婦の年齢、子どもの有無、婚姻期間や同居期間などを考えて検討することになります。

 

投稿者: 弁護士石井康晶

2016.04.25更新

生活費は請求できます

夫婦は収入に応じて互いの生活費を負担しなくてはなりません。より収入の高い配偶者がこの義務を怠っているときは,より収入の低い配偶者は,生活費の分担を請求できます。この生活費のことを婚姻費用といい,家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てることができます。

婚姻費用の額は互いの年収,子どもの数・年齢に応じ,養育費・婚姻費用算定表というツールを利用して割り出します。費用に関する争いを長期化させず,早期に支払いを受けることが期待できます。算定表はネット上でも閲覧できます。

よくある反論

よく当事者の間で見受けられる主張として,「子どもに会わせないなら払わない」,「貴方にも収入があるのだからそれで生活しなさい」といった言い分があります。しかし,子どもと会うことと婚姻費用(養育費)の支払は無関係ですので,こうした主張は認められません。子どもとの面会は,別途面会交流調停で解決することになります。また,婚姻費用(養育費)は収入に応じての分担ですから,収入があるから請求できないというものでもありません。

このほかに,「相手の方が不貞がばれて勝手にでていったのだ」という反論もままあります。不貞をした配偶者は夫婦の義務に反しているわけですが,にもかかわらず婚姻費用だけを請求することは権利濫用的であり,許されないことがあります。これに対して,単に不和から別居に至った場合、たとえ一方が勝手に出て行ったとしても婚姻費用の分担が必要になる可能性が高いでしょう。婚姻費用を請求された側から見ると,別居の原因がなんであるかは重要です。

月々の生活にも事欠く,そんなときは?

一方の配偶者が専業主婦(夫)で収入が無い場合,生活費が支払われないことは死活問題になります。調停が成立するのを待っているうちにお金がつきてしまう,そんな場合には審判前の保全処分を調停と共に申立て、仮払いを求めることになります。本来なら裁判所での手続を経て,相手に支払義務があるのか,いくら支払うべきなのかを決めるものですが,仮払いは結論をいわば先取りして相手に支払を命じるものです。収入はないけれども独身時代に貯めた預金がある,なんていう場合には先払いを求める必要性が否定されるかもしれません。生活を確保するための緊急の手段ということです。

月の暮らしにも困るような場合ですから,弁護士費用も心配になると思います。そこはご安心下さい。ほとんどの方に法テラスの利用を勧め、費用を立て替え払いしてもらっています。

ご相談に際して

夫婦の収入がわかる資料があるとベターです。源泉徴収票,課税証明書,給与明細書などをお持ち下さい。

投稿者: 弁護士石井康晶

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