2017.05.22更新

相談から依頼まで

依頼者は30代男性。3年ほど内縁の夫婦として暮らしていた女性が他の男性と肉体関係を持ち、その男性と交際することとなり内縁が破綻した。相手男性に対して慰謝料を請求したい。

内縁の問題点

婚姻届を出した夫婦の一方が、自由意思で配偶者以外の異性と性交渉に及ぶと不貞となり、離婚原因になるほか、その配偶者及び不貞相手のしたことは不法行為となり、それぞれに対する慰謝料請求が可能になる。不貞相手に対する慰謝料請求を認めることには異論もあるが、実務上は確立した扱いになっている。内縁夫婦の場合も、法律婚と同様に、不貞に対する慰謝料請求は可能である。ただ、法律婚とは違う立証上の問題もある。

まず、内縁の成立を立証する必要がある。法律婚なら戸籍謄本を見るだけで婚姻していることはわかるが、内縁では夫婦としての意思、生活実態があることを、相手が争う場合には証拠から明らかにすることになる。住民票が同一である、家計を同じくしているなど生活実態に関する資料の他、指輪の贈答や式を挙げている事実があればそうした事実も主張していくことになる。本件では、公的な書類を除いて女性が男性の氏を名乗っていたこと、同一世帯で連れ子と暮らしていたこと、破綻後も連れ子との面会を公正証書にして約束していたこと、女性の給与をいったん男性の口座で管理していたこと、連れ子の小学校入学を機に籍を入れる約束をしていたことなど、プラスに働く事実が多かった。結果的には立証不要だったが有利に進められる見込みはあったろう。

次に、相手が内縁配偶者の存在を知っていたことが必要だが、内縁夫婦は法律婚をした夫婦ほどには、外形から見てはっきり夫婦だとわかりにくい場合もあるだろう。不貞相手が知らない人間(たとえば、内妻の職場の同僚)の場合、不貞相手は内縁関係まではっきり知っているとは限らず、同棲している恋人がいるだけだと考えている可能性もある。このような場合は、注意すれば内縁関係の存在を知ることが出来たかどうかが問われるだろう。本件では、相手方が内縁関係を知らなかったと主張したが、一方で連れ子と3人で同居していたことは知っていた。また、自分が関係を持った時点で既に別れていたと聞いていた、とも主張したが、不貞当事者間のラインではやっと一緒になれるという発言があり、依頼者を交際の障害として捉えていたことは間違いないし、依頼者が出張中に自宅を訪ねることもあったため、こうした反論を排斥できた可能性はある。

和解、解決

本件では相手方が早々に和解に応じる気を見せたため、弁護士費用を除く請求額全額を頭金+分割払いで合意、速やかに和解が成立した。一月後、約定通りに支払がされ、業務終了。

おわりに 

本件では相手方が反論しつつも和解に応じる意向を早く見せたため、2回の期日だけで早期に解決することができた。これとは異なり全面的に争われていた場合、内縁の成立、相手方の故意という2つの争点について主張立証を尽くすことになり、相当の期間を要しただろう。

 

投稿者: 弁護士石井康晶

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