2016.09.26更新

今や離婚は珍しい話ではなくなりました。熟年離婚という言葉が膾炙して久しい感がありますが、若年夫婦の離婚も最近仕事の中でよく目にするようになりました。離婚は人生の再出発であり、セカンドライフに向けて好スタートを切るには正しい知識を持ってきちんと別れなければなりません。離婚に伴って考えること、決めることは多くありますが、棚上げすることで別れた後も元配偶者とのトラブルの芽が残ってしまいます。

ここでは離婚を考えたときに注意することをお話ししていきます。

 

離婚の方法は?

我が国で婚姻した夫婦が離婚するには、次の3種の手続いずれかを取る必要があります。

1 協議離婚

2 調停離婚

3 裁判離婚

 

1 協議離婚

 協議離婚は、夫婦で離婚届を作成し役場に届け出ることで成立します。もっとも簡単な方法による離婚で、多くの離婚は協議離婚でなされています。この方法は、時間も費用も掛からないというのが最大のメリットですが、簡単なだけに財産分与など重要な取り決めを離婚時にせず、棚上げしてしまうリスクもあります。財産分与は離婚から2年以内、離婚に伴う慰謝料請求は3年以内に行うことは可能ですが、離婚に伴う問題を先送りにすると、別れた後も元配偶者とのトラブルが起きることになり、一括した解決が遠ざかります。協議離婚をする場合でも、離婚に際して決めた方が良いことは何かを、ちゃんと専門家に相談した上で取り決めるのが良いでしょう。その他のメリットとしては、合意できればいいので裁判のような離婚事由が必要ないことも挙げられるでしょう。なお、離婚に際して約束事をするときは必ず書面化し、可能なら公正証書にしましょう。

 協議離婚は相手との協議、つまり話し合いですので、話し合いで合意できなければやりようがありません。これは離婚するかどうかという点だけでなく、子どもの親権者をどちらとするかで対立がある場合も同じで、親権者が決まらないことには離婚もできません。こういうときは次の調停離婚で解決を目指すことになります。なお、財産分与や慰謝料で争いがあっても離婚は出来ますが、一括解決が望ましいことから、この場合も調停を利用する方が良いでしょう。

2 調停離婚

 家庭裁判所での話し合いを経て、合意できたときに調停調書を作成し、合意できた日に離婚が成立します。調書の正謄本を持参して役場に行き、離婚届と一緒に提出すれば戸籍上も夫婦でなくなります(離婚届に配偶者の署名は必要ありません)。調停を行う家庭裁判所は、相手の住所を管轄する裁判所ですので、別居中の夫婦では場合によってはかなりの遠方になってしまいます。遠方での調停に支障があるときは、電話会議システムの利用をしたり、自庁処理といって管轄を持たない裁判所に調停を申し立てそこで処理してもらうようにするといった方法が考えられます。調停では2人の調停委員(通常男女1名ずつ)と話をし、調停委員を通じて自分の考えを相手に伝え、相手の考えを自分に伝えてもらうことになります。調停のメリットは、協議離婚と同じく話し合いによる合意を目指す手続であることから、協議離婚のように柔軟に取り決めが出来ること、第三者による説得などの介入があり、1対1の話し合いより円滑に進みやすいことが挙げられるでしょう。しかし、あくまで話し合いですので、相手が自分の要望を断固飲まなければ終わってしまいます(逆に、自分も相手の要望を撥ね付けることが出来ます)。ここが調停の限界で、不貞など法定の離婚事由がない場合に相手が離婚を拒否すれば、今すぐの離婚を断念しなくてはならないこともあります。また、財産の話などになると必要書類も多くなり、本人で対応するのは大変になってきます。弁護士の助力の必要性は、協議離婚よりもずっと高いでしょう。調停委員にも個性があり、時々中立性を疑うような言動を目にすることもあります。あなたの調停を担当する委員がそのような人間であれば、損害を被る前に弁護士を代理人として付けて対処するべきです。

 大体のスケジュール感覚ですが、申立⇒第一回期日まで1ヶ月程度、その後の流れは争いになっているポイントによってまちまちですが、大体1ヶ月毎に花井愛を行い,トータル数ヶ月から1年くらいの範囲で考えておくと良いでしょう。お互いに弁護士が付いていれば連絡がスムーズなので、本人同士よりも早く解決できる見込みが上がります。

3 裁判離婚

 証拠を元に法律で定められた離婚の原因があることを証明することで離婚の判決が下ります。判決が確定すれば晴れて離婚したことになり、判決書等を持参して役場に行けば戸籍にも反映させることが出来ます。最大のメリットは、離婚するかしないか白黒つけられることです。デメリットは、証拠と法律に基づく判断で柔軟性に欠けること、時間と費用がかかることです。我が国は裁判の前に調停を経ることを原則としていますので、裁判まで来るということは夫婦の話し合いができず、調停でも折り合いが付かないということにほかなりません。ですから調停から数えると相当な期間がかかります。もっとも、裁判の途中でも和解という形で話し合いを持つことは可能です。

 我が国で法定されている離婚の原因は次のとおりです(民法770条1項)。

夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することが出来る。

一 配偶者に不貞な行為があったとき

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき

三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

四 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき

五 その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

不貞は代表的な離婚事由です。配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて性交渉を持つことを言います。同性同士の場合や性交渉に至らない親密な接触があったときは5号「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」を主張することになるでしょう。証拠は、行為時の写真や動画といった直接証拠があれば別ですが、多くは間接証拠をつみあげて立証していくことになります。

悪意の遺棄は別居を一方的に開始して生活費も入れず,配偶者の生活を困窮に置く場合がこれに当たることがあります。もっとも程度問題であり、単に別居して生活費を十分送らないくらいでは悪意の遺棄にならないことがあります。

その他婚姻を継続しがたい重大な事由としては、暴力・暴言、長期間の別居が典型ですが、ほかにも配偶者の宗教活動、義理の両親との問題(配偶者が関わっていることが必要でしょう)、刑事事件を起こし有罪になった等々、非定型な事由もあります。結局の所、客観的に見て修復が不可能と言える程度に関係が壊れていることを明らかにしていくことになります。

以上の離婚事由は法律概念であり、どんな証拠に基づいてどんな主張を組み立てるかは、本人のみで行うことは難しいでしょう。もっとも弁護士の助力を必要とするのが裁判離婚です。スケジュール感覚ですが、半年から1年程度、控訴・上告と進めば2~3年は見ることになるでしょう。

 

離婚を考えたら~自分は何故離婚したいのか、それは法定の離婚事由に当たるのか考える~

 離婚を考えるからには、それなりの事情があるのが普通でしょう。その理由を突き詰め、さらに相手が離婚を拒否した場合にも離婚できるのか=法定の離婚事由が備わっているかを考えてみることは有益です。今、そしてこれから取る行動が変わってくる可能性があります。

1 不貞、悪意の遺棄など770条1項5号以外の理由のとき

 法的判断と証拠集めが必要です。夫が他の女性とデートをすれば「浮気」かもしれませんが、法律上の「不貞」ではありません。家を出て行かれ十分な生活費を振り込まないからといって「悪意の遺棄」とは限りません。離婚事由はいずれも法律概念ですので、専門家の判断を仰ぐのが先決です。次に、仮に「不貞」に当たるとしても、それを立証できる証拠がないと相手に否定されれば勝てません。証拠集めが不可欠です。特に訴訟では証拠を元に事実を認定しますので、証拠が無ければ訴訟自体断念することになりかねません。また、調停でも優位に進めないでしょう。また、法律相談に見える多くの方が、「証拠がある」と言いますが、実際に見てみると不貞の証拠にはならないことがままあります。せいぜい親密さを推認できる程度(これは場合によっては5号に該当しますが)であるなど、当事者の証拠評価は緩いというのが正直なところです。「証拠」があっても専門家の目に触れさせる機会を持つべきです。「証拠」から離婚事由を立証できないと判断されれば、訴訟まで踏み切ることは難しくなります。調停で合意を目指し、合意に達しないときは証拠確保の機会を待つか、別居を開始することになるでしょう。

2 5号事由のとき

 婚姻関係が破綻しているかどうかを判断しなくてはなりません。長期間の別居が先行している場合、婚姻期間や同居期間と対比しつつ比較的容易に判断できます。しかし、その他の理由による場合は破綻の有無を判断する必要があり、また、相手方が争った場合に備えてやはり証拠が必要です。基本的には不貞などの場合と同じように考えれば良いのですが、証拠に基づいて判断しても破綻しているとはいえない場合は、別居を先行させます。よく言われるのが家庭内別居による破綻ですが、同居している限り簡単に破綻は認められません。

3 性格の不一致のとき

 俗に言う性格の不一致は、それだけでは離婚原因になりません。相手が嫌といえば離婚できないことになります。自分では相手のモラルハラスメントのせいで破綻したと思っていても、第三者から見れば性格の不一致と評価されることもあります。何を「性格の不一致」というかは一つの問題ですが、「相手に主たる責任が無い場合≑どっちもどっち」の場合は単なる不一致の問題と見て良いと思います。このときは相手が離婚を拒否するとただちには離婚できませんので、別居を開始して破綻に持って行くことになります。ここは5号事由と同じですが、証拠があっても裁判では離婚が認められない点が違います。

4 あなた自身が不貞などをしたとき

 この場合、あなたは離婚原因を作った当事者として、「有責配偶者」と呼ばれます。合意できればもちろん離婚可能ですが、そうでない場合、相当長期の別居を経ないことには易々と離婚請求が認められることはありません。具体的に何年の別居が必要になるかはケースバイケースですが、短くても7年程度、長ければ10年以上が必要でしょう。あなたがどうしても離婚を望み、配偶者が離婚を拒否しているなら、ともかく別居を開始しなくてはなりません。

 上記はおおまかな分類(一般的にこのように分けているわけではありません)ですが、1・2の場合は証拠次第で速やかに離婚に向けた行動を起こすことが出来、相手が拒否しても裁判上の決着を付けることが考えられます。3・4は同居している限り強制的な離婚は困難です。協議離婚できなければ別居を先行させるのが良いでしょう。肝心なことは、自分がどのタイプに属するのかを知り、適切な行動を取ることです。

 次回以降は離婚に伴う様々な問題や細かい準備について扱います。

投稿者: 弁護士石井康晶

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